ずぼら女子奮闘記

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最後の10ページと解説がすごい/有川浩『明日の子供たち』感想

年に50冊は本を読む読書好きのすだちです。
有川浩さんの最新単行本、「明日の子供たち」を読了しました。お話自体も面白かったんですけど、その背景なども考えるとさらに深く読めるお話だったので紹介したいと思います。

あらすじ

三田村慎平は転職先の児童養護施設で働き始めて早々、壁にぶつかる。生活態度も成績も良好、職員との関係もいい”問題のない子供”として知られる16歳の谷村奏子が、なぜか慎平にだけ心を固く閉ざしてしまったのだ。想いがつらなり響く時、昨日と違う明日がやってくる。先輩職員らに囲まれて成長する日々を優しい目線で描くドラマティック長篇。
単行本裏表紙のあらすじより
 
物語自体は、最初の数ページからぐんぐん引き込まれていく、いかにも有川さんが書いたんだなぁという作品となっています。
児童養護施設の新米職員、三田村慎平の奮闘する様子や、子供たちの気持ちの変化や考え方が描かれています。
途中甘酸っぱいシーンもあり、「あぁ、有川さんの作品だ」と思わずきゅんきゅんしてしまいました。(きゅんきゅんってもう使われてないかな?)
自衛隊の人が出てくるシーンでは、「有川ワールドだ!」と思わずにやり。
私は1日で一気読みしてしまいました。続きが気になり、ページをめくる手が止まりませんでした。
明日の子供たち (幻冬舎文庫)

明日の子供たち (幻冬舎文庫)

 
 
(※この先はネタバレになります。ネタバレが嫌な方は、先に本を読んでから、この記事を読んでください)

 

最後の10ページで「もしや…」と思い、解説を読んで骨抜きにされた

この作品、わざわざ私がブログに書いたということはすごく主張したいことがあったということです。
この見出しの通り、最後の10ページで「これはもしや…」と思いました。最後に奏子(”問題のない子供”として登場する高校2年生の女の子)が大好きな作家の先生に宛てて「児童養護施設についての小説を書いてください」と書いた手紙を読んだ時です。
「これって、有川先生のところにも同じような手紙が送られてきたんじゃないの?その手紙に感銘を受けて、有川さんがこの作品を書くことになったんじゃないの?」という気持ちがわいてきました。
本の中から繰り返し伝わってきた「施設にいるからといって可哀想ではない」という主張、この裏に何かあるんじゃないかという気持ちににもなっていました。
その予感は解説のページを開いた瞬間に的中しました。やっぱり。解説者の笹谷美咲さんは、児童養護施設の出身の方。高校1年生の時に施設のことを知ってほしくて、有川さんに手紙を書いたそうです。
解説を読みながら「やられたぁああああ」と悶絶してしまいました。すごい、そんなことってあるんだ、最後の数ページまでそんなことを全く予感できなかった私、ちょっと悔しい。
 

解説者 笹谷美咲さんの思惑に思いっきり踊らされた

有川さんはとても著名な作家さんで、新作が出れば必ず本を購入する読者さんがいる。
『明日の子供たち』p517 解説より
…はい、その通りです。私は有川さんの大ファンで、新作の本が出たら必ず購入しています。家の本棚には有川さんの本がずらり。何度も何度も読んでいます。私の青春時代を共に過ごしたといっても過言ではないような。
今回の作品も、書店で見かけて問答無用でレジへ持っていきました。あらすじも一切確認せずに。有川さんの作品だったら絶対面白いという圧倒的信頼があるから。
そして、本を読んで、今この感想を書いているというわけです。
正直、施設のことなんて全然知りませんでした。今も、この本を通して知ったことくらいしか知りません。今まで生活の中で施設と関わることなんてなかったから…
 
最後の章では、社会や行政の中での施設の位置づけについてもずいぶん言及されていました。
施設に回す予算が少ない理由がよくわかりました。施設で暮らしている子供たちには投票権がないから。他の人なら頼れる(=施設の拡充に理解のある議員さんへ投票してくれる)家族もいないことが多いから。
私も次の選挙の時はどの程度施設に対して動いているのか、という点も見て投票したいと思います。
今まで意識してなかった世界への扉を少しだけ開いた気持ちになりました。
 
有川さんの作品は、作品を通して社会情勢などにもわかりやすく切り込んでくれることが多く、その点も好きだったりします。県庁おもてなし課とか、3匹のおっさんとか。
 

作家の人ってやっぱりすごい

こんなこと言ったら作家さんに失礼だとは思うんですけど、やっぱりすごいと感じてしまいます。自分の知らなかった世界について、いろんな人にインタビューしたり、視察したり、文献を読んだりして物語を作ってしまうのだから。
私が文章として書けるのは、自分が実際に見て、聞いて、感じたことだけです。
自分とは別の登場人物を自由自在に動かして物語を作ることは到底できない。(自分を引き合いに出してる時点でおこがましすぎるのですが)
そんなことをやってのけてしまう作家さんは、本当にすごいと思います。(それが仕事だと言われたらそれまでなんだけど)
 
有川さんは、自衛隊だったり県庁だったり障がい者だったり引きこもりのニートだったり、新しい世界へ私を導いてくれます。そんでもって恋愛要素がそっと差し込まれてくる。たまらないです。そんな有川さんの作品が私は大好きです。
 

おわりに

まだまだいくらでも語れるけど、これくらいにしておきます。
よかったら超おすすめなので読んでみてください。
気が向いたら追記するかも。では!
明日の子供たち (幻冬舎文庫)

明日の子供たち (幻冬舎文庫)