ずぼら女子奮闘記

ずぼら女子がリアルでは言えないことを吐き出すブログ。

はじめてのバー

「今日の夜飲める?」
「行ける」
「天才」


金曜日の午後、簡単なやりとりが行われる。目安の時間を伝え合い、先に着いた方は各々の方法で時間を潰す。このご時世、時間の潰し方なんていくらでもある。

午後8時過ぎ、駅前のドトールに入っていたわたしの元へ友達がやって来る。


「お疲れ〜」
「今日はなんの気分?」
「あのラーメン食べに行きたい、そのあと飲もう」
「はいよ〜」


前から気になっていたというラーメン屋へ足を運び、淡々とラーメンを食べる。
シンプルな醤油ラーメンが、冷え切った身体に染み渡る。無言で食べること10分。
お互い食べ終わったことを確認し、店を出る。


「さて、今日は何が飲みたい気分?」
「ビールとかワインをゆっくりやりたい」
「そしたらお腹は既に満たされてるし、前から気になってるバーに行ってみようか、隣駅だけどいい?」
「もちろん」


駅を移動するごとに、自宅が近づいて行くのも利点。どんなに遅くなっても、30分後には帰宅できる距離だ。

道中「あの店今度行こうよ、家族で行って良かった」「日本酒と魚はあの店が良いという噂」などといったことを話す。


バーの扉を開く。わたしも友達もバーの経験値は乏しい、というかほぼ0だ。
扉の向こうにいたバーテンダーさんは若造ふたりを優しく迎え入れてくれた。


ずっと入ってみたくて、お店の前まで来て幾度となく引き返して来た経験、どこかの記事で「ひとりでいきなりお店に行くのは外れたときのリスクが大きいから、まずは数人で行ってみて、ひとりでも行けそうだったらその後に行くのが吉」と書いてあったのを思い出し、よし、友達を連れて来て若造だけでも受け入れてもらえるか偵察をしよう、と心に決めたのだった。

 

一番奥のカウンター席に通される。
なんだろう、薄暗い照明と、重厚なカウンター、背が高くて背もたれがあまりないけど長時間座っていても全然疲れない椅子、全てが素敵な空間だった。


バーテンダーさんに「マスカット系で、さっぱりしてる柑橘系のやつが飲みたいです」と伝える。
友達はメニュー表から語感だけでお酒を選んでいた。
カタカナパラダイスである、カタカナを覚えるのは難しい。世界史の暗記は一番苦手な分野だった。


レーズンバターの正体がなんなのかよく分からないまま、レーズンバターを頼んだ。
カクテルグラスの中に細かく砕いた氷、そしてその上にレーズンバターがきれいにカットされ、パセリと共に盛り付けられて出てきた。
想像通りのレーズンバター、ものすごく美味しかった。5年前に食べても別に美味しく感じなかっただろう、味覚の変化を感じる。


今まで見たことのないカクテルの名前がたくさんメニュー表に並んでいた。
まるで外国に来たような気持ちで、ラムとかジンとかテキーラとかは分かるけど、それ以上の情報をメニュー表から汲み取ることはできない。
バーテンダーさんにオススメを聞きながら、何杯か注文した。


家で飲むお酒と、外で飲むお酒は美味しさが全然違う。
誰と飲むか、どんな店で飲むか、何をアテに飲むか、いろんなシュチュエーションが無限に組み合わせられるけど、仲の良い友達とバーで飲むのはとても素敵なことだと思った。
そして、多分ひとりで来ても楽しめるんだろうな、と思った。


家でお酒が飲みたくなって、缶ビールを開けたりするけれど、なにか違うんだよなって思う。そんなに楽しくない。
「家」という空間で、ひとりで飲むのはなんか違う。また住む部屋や、環境要因が変わったら「自宅でのひとり飲み」も至高になるのかもしれないが、今の環境では「なんか違う」ということになる。
ひとりでラーメン屋や回転寿司で一杯だけ飲むビールの方がずっと美味しく感じるのだ。
それ以上に気の合う友達と美味しいご飯とお酒を楽しんでる時が一番楽しいし、幸せに感じることができる。


それは「家と外」という環境要因の違いが生み出していたり「お店の雰囲気」に左右されることも多くあると感じている。
お金も、学生の時よりはかけられるようになった。美味しいご飯とお酒に同じくらいお金が出せる友達もいる。価値観が似ている相棒がいるのは幸せなことだ。


「こうやってさ、今は独身で自由だからいつだってすぐ飲めるけどさ、みんな少しずつ結婚していったらこういう突発的な遊びもできなくなるんだよね、誘うことだってできなくなるよね、さみしいね」
なんてことを語り合った。


金曜の午後や仕事終わりに突然連絡をして飲みにいったり、終電ギリギリまで粘ったり、ノリでドライブに出かけたり、美味しいお酒に出会って「くぅう〜〜」と唸りながらお酒を飲んでゲラゲラ笑いながら昔話をしたり、
そういったことが、少しずつ遠くなっていくのかなと思うと切ない。


一番自由で、開放的で、お金も自分のためだけに使える、すぐに誘える友達が何人もいる、そんな「今」を大切にしていきたいと思った、金曜日の夜。

 

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