高校の化学の先生と思い出
唐突に高校時代の化学の授業の思い出がよみがえったので、思い出話を書いてみる。
高校3年生の春、新たなクラス分けの結果、同じクラスで物理と化学を選択したバリバリの理系女子は私ともう一人の女の子だけだった。クラスで2人しかいない理系女子。
仮にKとしよう。Kとはあまり話したことがなかったけれど、前からKの存在は知っていて、なんとなく気が合いそうな、面白そうな子だなとは思っていた。私たちの距離が縮まるのに、時間はほとんど必要なかった。
毎日のようにある数学ⅢC、物理、化学の時間。移動教室は決まって彼女と移動するようになった。いろんな話をして、くだらないことで笑い転げていた。
私は理系に進んだけれど、決して数学や、物理や、化学が得意だったわけではない。特に数学はめちゃくちゃだった。
先生が何を言っているのか、黒板に何が書かれているのか、参考書の説明が何を説明してくれているのか、さっぱり分からなかったし、でも進みたい分野が理系だったから必死に食らいついていた。微分とか積分とか、運動方程式とか、有機化合物とか。今聞くと懐かしい単語ばかりだけど、もう当時はさっぱり分からなくて、でも少しだけ分かった瞬間が楽しくて、四苦八苦しながらも夢中で勉強していた。
高校の授業で特に印象に残っているのが化学の授業である。先生が、とてもいい先生だった。
私たちにとても熱い授業をしてくれて、ほぼ毎時間と言っていいほど実験をやらせてくれた。実験の準備は大変なはずなのに、嬉しそうな顔をしながら、化学の面白さを伝えてくれた。朝や放課後に質問をするために化学実験室へ行くと、いつも実験の準備をしている先生がいた。部活帰りに校舎を見ると、化学実験室だけ明かりが灯っていることがよくあった。
その先生のおかげか、化学に関しては高校時代、得意教科と名乗れるほどになったし、今でも忘れられないエピソードがいくつもある。
化学の教室は、普通の教室とは違って実験がすぐにできるように机の配置が少し変わっている。化学の時間は実験の班ごとに分かれて着席するシステムになっていた。
40人近くの化学の授業、同じ教室の中に女子は8人。(化学・生物選択の女子もいるから、物理の時間より化学の時間の方が少しだけ女子の比率が上がる)
8人の女子は、4人ずつの班分けになっていた。私とKは当然同じ班。あとの2人は隣のクラスの理系女子だった。この4人で1年間化学の時間を共に過ごしたのだが、本当に楽しかった記憶がある。
卒業するときに化学班の4人で東京の科学技術館へ行って、1日中子供に混ざって遊び倒したりもした。卒業後も、定期的に顔を合わせている。
私たちの席は、教室の中央の一番前。先生の目の前の特等席だった。
あーでもない、こーでもないと言いながら実験をしている私たちに先生はずいぶんと構ってくれていたように思う。
化学の授業の実験は、とにかくめちゃくちゃ楽しくて、次はどんな実験なのかな、どんな反応があるのかな、どうしてこの色になるのかな、なんて考えると高校生ながらにワクワクしたし、それが理論的に説明できるようになった瞬間の喜びはものすごく大きかった。
化学の先生は、化学以外のこともたくさん教えてくれた。
地球温暖化や環境問題など、世界が直面している危機についてたくさん語ってくれた。
「あなたたちは日本や世界を引っ張るリーダーになりなさい」とよく口にしていた。
「この教室の中から、ひとりでもリーダーが出て、そのリーダーが僕が授業で話したことを少しでも覚えていてくれたら、それを少しでも実現してくれたら、それに勝る喜びはない」と話した時のことは鮮明に覚えている。
私は「この教室からそんなすごい人出てくるのか?」なんて他人事に捉えていたけれど、あながち先生が言っていたことは実現不可能じゃないんじゃないかってふと思った。
私は研究の道は諦めてしまったけれど、海外で腰を据えて研究を続けている友人もいるし、博士号に進む意思を固めている友人もいる。すごそうな賞を取っている友人もいるし、あの化学実験室に集まっていた高校生のときの私たちには無限の可能性が広がっていたんだなぁと今更ながらに思う。当時は全く考えていなかったけれど。
私はあの先生が言っていた「リーダー」にはなれないだろうけど、なにかどこかで社会に還元できることができたらいいなって今思い出して改めて感じた。
少しはそんな仕事ができたらいいな。
話題があっちへ行ったりこっちへ行ったりまとまりがないけれど、私の高校時代の思い出話でした。おわり。