久しぶりの快晴。いつ雨が降ってくるかは分からないけれど。
4日ぶりの外出。外の空気を吸い込んで深呼吸をする。
ようやく干せた洗濯物を満足げに眺めて、車を走らせる。
溜まっていた事務手続きをするために、銀行をはしごする。めんどくさいけど仕方ない。全部オンラインでできたらいいのに。
青い空、川の周りの田んぼが自然のエネルギーを放っている。稲穂が少しずつふくよかになってきている。黄色と緑が混ざって、黄緑色のじゅうたんに見える。遠くに目をやると高いビルがある。でも、ビルまでの距離は遠い。空は広い。風がそよいでいる。最後の夏が、夏のエネルギーを爆発させているという感じ。
旅に行きたいと思った。旅行でなくて、旅。数日間レンタカーを借りて、知らない土地を走り回りたい。もしくはフェリーに乗って、遠くの島へ行きたい。
数年前に行った北海道1周の旅は最高だった。宿だけ決めておいて、あとは行き当たりばったり。前後左右どこをみても他の車がいない道をひたすら走る。たまに、爆速で走ってきた車に追い抜かれる。景色は変わらない。変わらないけど、変わっていく。広すぎて柵が存在しない牧場、生えている木がの種類が本州とは明らかに異なる山道、雪を残したダム、海沿いで色んな表情を見せて打ち付けてくる波。教えてもらわなかったら海だと思い込むほど大きな湖。自然が作り出した、細く長い道。先にあるのは灯台だけ。それでもそこは道道*1で、道は続いている。枯れ果てた土地のような景色。夕焼けを見るために登った、舗装されていない山道。車を運転しながら崖から落ちるかと思った。本州は暖かい季節だというのに、空気が冷たかった。でも、厳しい冷たさじゃなくて、目が覚めるような冷たさ。すっきりとしていて、いつまでも深呼吸をしていたかった。豊富な雪解け水が流れる川でのラフティング。照り付ける太陽は暖かいのに、水は最高に冷たかった。冷たくて気持ちがいい。車で北海道を回っていると話したら、同じボートの地元のお姉さんたちから驚かれた。物価もなにもかも世界遺産価格で何も買えなかった知床半島。もっとリッチになったらまた来たいねと、自分たちの基準からはとんでもなく高い海鮮丼を食べながら話した。
夜、人が減った漁港のまち。居酒屋を求めてさまよう。人が全然歩いてなくて、不安を感じた。かろうじて見つけた店の前を、3回ほど往復して、一見でも受け入れてくれるかを観察する。ええいままよと入ったお店は大当たり。貝をたくさん焼いて食べた。反対側の席には、地元の若者集団が延々とパチンコの話をしていた。この街にはパチンコしか娯楽がない、パチンコは生活の一部だ、給料の半分はパチンコに吸い込まれている、と言い切っていた。
アイヌのまち。ここでも夕食難民になる。勇気を出して入ったお店で熊を食べる。熊、少しクセがあるけどおいしい。獣系のお肉は割と好きである。熊の力強さを感じながら、この熊はいつまで生きていたんだろうとか思う。ゴールデンカムイを最近読んだ。次行く機会があれば「ヒンナヒンナ」と言いながら食べたい。
日本は広い。知らない土地がまだまだたくさんある。観光地に絞った旅行ももちろんいいけど、あてもなく車を走らせたり、18きっぷでローカル線に乗ったり、そんな旅がしたい。
若く元気な20代の頃にたくさんできてよかった。でも、まだやりたい。旅をしたい。知らない土地の空気を吸って、写真を撮って、美味しいものを食べたい。知らない土地に行くのは楽しい。早く行きたい。知らない場所へ身軽なうちに。