溶け込む
久しぶりに、街に溶け込めた。
病院帰りに、本屋さんへ行ってみることにした。そういえば、今度友人に会うときの手土産も買えたらいいなと思い、デパ地下へと行った。
少し前なら、混んでいる夕方のデパ地下なんて、一番避ける場所だったのに、自然と足は、デパ地下へ向かった。人の多さや混雑は感じるけど、前のようにくらくらすることはなかった。
2周くらい売り場を回って、美味しそうなマドレーヌを買うことができた。街が、クリスマスモードでとてもかわいい。
花屋さんの前を通った。ここもクリスマスモードで飾り付けをされていて、心が、ちょっぴりうきうきした。人がたくさんいる街を歩いて、うきうきした気持ちになったのは久しぶりだった。本当に、久しぶりだった。
お花がかわいいな、クリスマスの飾り付けがかわいいな、雑貨屋さんにあるポーチがかわいいな、このグラスがかわいいな。そうやって、街の中にあるたくさんのモノたちにときめくことができた。自分のペースで、自分が素敵だなと思うモノたちを見て、ちっとも気が動転していないことに気が付いた。いつもだったら、動悸や汗や過呼吸で、それどころじゃなかったから。
ようやく、街に溶け込めた気がする。
「戻ってきたね、おかえり」といつもの街が歓迎してくれた。
日常にある、ささやかなことに喜びや感動を感じられるわたしの特性を、わたしはとても好きで愛していることを思い出した。
今まではそんな余裕どこにもなくて、約半年間、感情を欠如したような、自分の中の大切なパーツがどこかへ行ってしまっていたような気がした。でも、帰ってきた。ちゃんと些細なことで喜べる、この豊かな心が戻ってきてくれた。おかえりなさい。
わたしは、今、とてもうれしい。きっとこの好調が永遠に続いてくれるわけじゃない。また上がったり下がったりを繰り返して、少しずつ時は流れていく。でも、ちゃんと、回復したことを大切に思いたいし、その力がまだ残っていること、生きるエネルギーは、全然失っていなくて、むしろこれから今まで以上に溢れてくるのだと信じている。
わたしはわたしであり、独立した個人だけど、街にも溶け込みたいと思う。その土地が肌に馴染む感覚、地元では特に強く感じる。上手く言葉にできないけど、そうやって、自分にとって一番いい深さで溶け込みたい。